2014/09/01


風邪薬、解熱鎮痛薬に用いられる成分について
※  成分名の読み替えについて  過去の手引き、学習参考書、OTC薬パッケージでは 左の物質名が記されている ことも少なくありませんが、最新の厚生労働省による試験問題作成の手引きでは( )内の表記が選択されています。 ほぼ同じ物質 であると 理解してください。
マ レイン酸クロルフェニラミン →(クロルフェニラミンマレイン酸塩)
塩 酸ジフェンヒドラミン → (ジフェンヒドラミン塩酸塩)
塩 酸メチルエフェドリン → (メチルエフェドリン塩酸塩)
塩 酸プロムヘキシン → (ブロムヘキシン塩酸塩)
塩 化リゾチーム → (リゾチーム塩酸塩)
臭 化水素酸デキストロメトルファン→(デキストロメトルファン臭化水素酸塩)
リ ン酸コデイン →(コデインリン酸塩) 
かぜぐすり まず配合されやすいのが、くしゃみや鼻水を抑えるための成分です。
こういった症状は いわゆるアレルギーが原因であることが多いので
くしゃみ鼻水のための かぜ薬成分として ヒスタミンを抑えるための 抗ヒスタミン成分が
配合されることが多いのです。その代表格として 有名かつ覚えておくべきなのは
マレイン酸クロルフェニラミン塩 酸ジフェンヒドラミンです。
後者は 単にジフェンヒドラミンと呼ぶこともあります。フマル酸クレマス チン
メキタジンなども 抗ヒスタミン成分ですから しっかり覚 えておき ましょう。
 さらにもうひとつ盲点があります。くしゃみ、鼻水を抑制するのは
抗ヒスタミン成分以外でも、抗コリン成分のヨウ化イソプロパミドで も その作用があるので す。
ですから かぜ薬に配合される、くしゃみ 鼻水対策のヨウ化イソプロパミ ドは、
抗ヒスタミン成分ではなく、抗コリン成分であることを 肝に銘じておきましょう。
 次に紛らわしいのが、咳や呼吸を楽にするための成分、また呼吸のわずらわしさを
軽減するために 痰の切れをよくする成分 これらは すべて作用のメカニズムが
異なる3つ分類の成分があるのです。
 まず1つめは、呼吸するときに空気の通り道となる 気道という管があります。
これの内側が 炎症などで腫れるために、気道の内部の半径 つまり内径が小さくなり
息がしずらくなることが多々あります。この気道の内側の腫れをとり
内部の空気の通り道の管の断面積を広げてあげる作用があります。
これが 塩酸エフェドリンエ フェドリンと いわれる成分です。
塩酸メチルエフェドリンなどということもあり 生薬のマオ ウも同じ 作用がある成分として扱われます。このような作用をもつ成分をアドレナリン作動成分といいますし、その作用から気管支拡張成分ということもあります。テオ フィリン ジブロフィリンなど 喘息の治療薬なども同じ分類です。
  これらのアドレナリン作動成分の具体的な効能といえば、気管や気管支を拡張して
鼻粘膜の充血を和らげるということでしょう。つまり、気管支のような管全般に
作用することを考えれば 鼻の部分の管にも同じように作用して呼吸を楽にしてくれるのです。
 2つめの 呼吸を楽にする作用として重要なのは、咳を鎮めるタイプの成分の
コデインリ ン酸コ デイン臭化水素酸デキストロメトルファンノスカピン、 などです。
これらはまとめて鎮咳(ちんがい)成分といいます。

 中でも有名なのが リン酸コデイン、や コ デインなどですが、これらは
麻薬の原料のケシの成分でもあるので、依存性、や麻薬性があるといいます。
これに対して、依存性のない、咳を止める成分に ノスカピンと いうものもあります。
また 結果的に咳を鎮める効果があるという点で、胃腸などの筋肉のけいれんを
止める 鎮痙(ちんけい)成分に パパベリンという成分も あります。

 一方 依存性のあるリン酸コデインリ ン酸 ジヒドロコデインは同類の成分ですが
後者の方が効力が強く、リン酸コデインの半分の量で 同等の効果があるとされます。
また リン酸ジヒドロコデインなどは 咳を鎮める一方、腸 の運動も止めてしまう
傾向があるため 副作用として便秘があげられます。

 さきほど触れた、気管支拡張成分も、気管支を広げることにより、結果として
咳を止めることにつながることも期待されますが、あくまで、気管支拡張成分として
咳止め成分と区別して理解しましょう。
 リン酸コデインなどの系列の成分は 脳の延髄にある中枢 にはたらいて
咳がでそうになるところのメカニズムを中断するように抑えるのです。
 また さきほどでた抗ヒスタミン成分などでも、マレイン酸クロルフェニ ラミン
と紛らわしい形で クロルフェニラミンマレイン酸塩と表記 されこともありますが
両者は同じ成分です。
  3つめの呼吸を楽にする成分として、痰の切れを良くする、痰が出やすくする
去痰成分があります。これは いままで解説した気管支拡張成分や抗ヒスタミン
抗コリン成分とは別で、痰などの異物を 気管支などの粘膜内部の繊毛(せんもう)などが
より活発に働き、粘り気を和らげることで 痰を出そうとする働きを活性化する成分なので
また 別に分類して理解する必要があります。
 こういった去痰成分には 塩酸プロムヘキシンに加えて
生薬セネガ シャ ゼンソウキキョウ オウヒ、セキサン などを記憶しておく必要があります。

 最後にかぜ薬に配合される呼吸関連の成分といえば、抗炎症薬です。
この機能をもつ成分は その字のとおり、炎症を起こしている部位の炎症を和らげたり
する効果をもつ成分で、抗炎症成分として分類できます。
代表的なのが 塩化リゾチームであり、その成分は鶏卵の卵 白から抽出されてつくられるので
卵アレルギーの人は 要注意ということが言われます。
その他には、トラネキサム酸がありますが 凝固した血液が 分解されにくくする
働きがあるとされるので、血栓傾向のある人に対しては、
血栓を安定化させてしまう恐れがあります。
この成分は、のどの痛みや口内炎などにも適用され、かぜ薬だけでなく、口内炎薬、歯磨き粉
などに配合されることもあります。
もうひとつのかぜ薬に配合される可能性のある抗炎症薬には グリチルリチ ン酸があります。
グリチルリチン酸二カリウムということもあります。
これは 漢方薬によく配合されるカンゾウと同類の成分のため、このカンゾウの副作用と同じで
大量の摂取により偽アルドステロン症を起こす恐れがあるので、
その摂取量には注意が必要です。


かぜ薬に必ずといっていいほど配合される成分が、解熱鎮痛成分という
分類の成分です。熱をとり、痛みをとったり、和らげるという効果を
達成するには、プロスタグランジンという成分がキーポイントになります。
これは薬の成分ではなく、人間が痛みを感じるときに その炎症を起こした
部位に出てくる局所ホルモンなのです。つまり、この人間が自ら
作り出す この 局所ホルモン プロスタグランジンを押さえ込めば
痛みを抑える鎮痛効果を発揮するといえるのです。
この メカニズムで鎮痛効果を発揮するのが、
アスピリンイ ブプ ロフェンイソプロピルアンチピリン
エテンザミドの解熱鎮痛成分です。
これらの成分は、炎症を起こして痛みの発生源となっている 
プロスタグランジンの生成を抑えることによって、痛みを和らげるので、
消炎効果をもっているといえます。
 ただし、プロスタグランジンは炎症箇所で 痛みを強めるだけの働きを
しているわけではありません。
 プロスタグランジンは胃では血行を良くする働きがあるのです。
したがって 解熱鎮痛薬の多くの作用である プロスタグランジンの抑え込みが
逆に胃腸の不調を招くことがあります。ですから、アスピリンイブプロフェン
イソプロピルアンチピリンエ テ ンザミドは 消炎鎮痛効果の副作用として
胃への負担があげられます。 
ただし、プロスタグランジンを抑える作用がありながら
比較的胃への負担が少ないのが、イブプロフェンであること も覚えておきましょう。
また 5大解熱鎮痛成分のうち、唯一 プロスタグランジンを抑える作用がないため
胃への負担がほとんどないといえるのが、アセトアミノフェンで す。
このアセトアミノフェンは 幼児から高齢者まで使える 比 較的おだやかな
解熱鎮痛成分です。つまり1歳から7歳までにも、12歳まででも、
15歳未満でも15歳以上でも使えるということなのです。
 万能であるかのようなアセトアミノフェンであっても 
副作用がまったくないわけではありません。
アルコールなどといっしょに飲んだり、アルコール常用者が服用すると、
肝障害を起こしやすくなったり
ぜんそくをもっている人などが 症状を悪化させる可能性も指摘されています。
 では 再びプロスタグランジンを抑える作用がある 
解熱鎮痛成分4つについてふれます。
そのうちの1つのイソプロピルアンチピリンは 5大成分の 中で 
唯一 ピリン系の解熱鎮痛薬なのです。
ピリン系の解熱鎮痛薬では、これに反応した副作用である 
アスピリンぜんそくを起こす可能性がまれにあるので注意が必要です。
 イソプロピルアンチピリンは より中枢性に働き、解熱、
鎮痛効果の高い成分なのですがピリン系であることから 
ピリン疹と呼ばれる湿疹やショックを起こすこともまれにあるため
逆に、ピリン系ではない成分に非ピリン系という表示をつけることで、
これらの副作用の履歴のある患者さんが 
非ピリン系を選択しやすいようにしたわけなのです。
とはいえ、イソプロピルアンチピリンはピリン系でありなが ら、
胃腸障害も比較的すくなく副作用もできるだけ抑えるように
改良された成分ではあるのです。
  次に プロスタグランジンを抑える作用がある 解熱鎮痛成分4つのうちの
もうひとつ、イブプロフェンについてみていきます。
これは 大人限定の解熱鎮痛薬ですから15歳未満には 使用不可なのです。
この解熱鎮痛成分は 単に頭痛や歯痛、生理痛などにも
適用されやすいことでわかるように、子宮に移行しやすい成分です。
プロスタグランジンを抑える作用がありながら、胃への負担は軽い方です。
次に プロスタグランジンを抑える作用がある 解熱鎮痛成分4つのうちの
もうひとつ、アスピリンは ピリンという言葉が入っているものの
非ピリン系ですから、くれぐれも間違えないでください。長く用いられている成分ですが
胃への負担もややあるほうですし、15歳未満には使用不可となっている大人限定の成分です。
また 血液を凝固しにくくする作用があるので 注意が必要です。
 プロスタグランジンを抑える作用がある 解熱鎮痛成分4つのうちの最後は エ テンザミドで す。
この成分も 非ピリン系ですが、水痘やインフルエンザの疑われる
高熱の小児などには避けるべきとされている成分です。
大人限定の成分ではありませんので 
ファミリー用かぜ薬の成分に配合されていることもありますが 
年齢の低い人子供への適用はできれば避けた方がよいと
考えられています。また、エテンザミドは 単独よりも
複数の解熱鎮痛成分が配合されるときに
補助的に配合されることも多い成分なのです。
 以上、内服の5大解熱鎮痛成分として、
アスピリンイ ブプ ロフェンイソプロピルアンチピリン
エテンザミドア セ トアミノフェンについて解説しましたが、
それぞれの特徴はつかめましたか。
最後に、解熱鎮痛成分の分類として、サリチル酸系の解熱鎮痛成分というものに区分され るものがあります。 これには まず、すで に言及した、エテンザミドに加え、サ ザピリン、サリチル酸アミドという 成分も 出題される可能性があります。 この系統の解熱鎮 痛成分の特徴として、15歳未満のものへ対する使用は ケースによっては控えるべきが、あるいは極力避けるべきとされている共通 点があります。水痘(=水疱瘡)やインフルエンザの疑われる高熱の小児などには避けるべき点については エ テンザミドの項目です でに説明していますが、まったく同じことが サリチル酸系の解熱成分であるサリチルアミドにもいえることなのです。さらに サリチル酸系のサザピリンにおいては、小児に対 してはいかなる場合にも使用してはならないとされていますので注意が必要です。 今ま で学んだその他の系統の解熱鎮痛成分で小児に対しては 使ってはならない解熱鎮痛成分には 「アスピリン」「イブプロフェン」も ありましたね。知識をいろいろな観点から整理しておきましょう。